旅の報告23/USAアラスカ
イグジット氷河ハイキング(Hello 熊さん)
キーナイ・フィヨルド国立公園でのシーカヤック・ツアーの後に、かねてから気になっていたスワードの町の近くにあるイグジット氷河を訪ねたので、ご報告いたします。(ワイルド・ナビゲーション/宮田)
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イグジット氷河もキーナイ・フィヨルド国立公園にあり、スワードから車で15分も走るとビジターセンターに到着する。この氷河も広大なハーディング氷原から流れ落ちる氷河のひとつですが、カヤックツアーやクルーズ船で訪ねる海に落ちる氷河とは違い、陸地に流れ込む氷河のため、より手軽に車で行ける氷河として有名です。通常はビジターセンターから、ほぼ平坦な道を15分ほどかけて氷河の舌端まで歩き、写真を撮ったら同じ道を戻って次の観光に向かうのが日本人向けの「氷河ハイキング」と言われています。一方、現地発着のガイド付きの「氷河ハイキング」のツアーは、ハーネスやアイゼンをつけて、ガイドさんとザイルを結んで氷河の上を歩く内容で、こちらにはあまり日本人は参加していないようです。
ところで、この氷河には他にもトレイルが何本かあり、氷河に沿って延びるトレイルを登り、イグジット氷河を上から見下ろすポイントへは、一度、出かけてみたいと思っていました。今回、シーカヤック・ツアーの後の時間を利用して、その願いが実現。勿論、季節や天候によって受ける印象はかなり違うと思いますが、登り2時間/下り1時間半で歩ける、なかなかお勧めできるトレイルだったので、ここにご案内いたします。一般的な体力があり、少し時間がとれる方にはお勧めできると思います。
ハイキング当日の朝。目が覚めるとスワードの町は生憎の大雨。これでは密かに楽しみにしていたハイキングは無理だろうなぁと思いつつ、ノロノロと準備をしていると雨は小雨に変わり、テレビやネットの天気予報でも雨の峠は越えたようだったので、ひとまずイグジット氷河に出かけてみることにした。行きがけに立ち寄ったカヤックツアー会社のオーナー夫人の話では、今年のスワードは天気が良すぎて風が強い日が多く、ツアー催行には苦労しているとのこと。今日のような天気は逆にウェルカムなのだそうだ。夏のスワードの本来の天気は、今年のようにドライな気候ではなく、もう少しウェットな気候のようだ。
さて、ワイルドナビ号(弊社所有のバン)でイグジット氷河に向かう。ビジターセンターの駐車場に着いた頃には雨もあがり、空の一部に小さな青空があった。それでも過度の期待はせずに準備をしていざ出発。イグジット氷河は温暖化の影響(?)で後退が激しい氷河で、ビジターセンターで買った絵はがきによると1917年頃には駐車場のあたりまで氷河が押し出していたようだ。トレイルヘッドから整備された道を氷河の舌端を目指して歩くいていると1917とか1961というような数字の看板が立っているが、これはその年の頃の氷河の舌端を意味している。そして、ほどなく現在の氷河の舌端に到着。同行してくれた地元の人の話では、10年前の位置と比べても相当に後退しているのがわかるそうである。
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通常、ここから氷河を触りに少しおりて元の道に戻るオーバールック・ループという 1 km 弱の道を歩くか、氷河の下流の川沿いを下るネイチャー・トレイルという道を歩いて戻るのだが、今回、我々はハーディング氷原を目指すトレイルを登りはじめる。登り始めの標高は 522 feet(約160 m)。このトレイルの終点 end of the trail の標高は 3,482 feet(約1,050 m)。今回、我々はその途中の 2,500 feet(約750 m)付近を目指して登る。しかし、天候もすぐれず途中で戻る可能性もあるので、私がどんな景色を期待してそこまで登るのか、参加者には特に伝えずにスタートした。
最初は日本の東北のような森の中を登るが、日本と違い森の密度が薄いので少し標高が上がるとすぐに視界が開けて、広々としたアラスカらしい景色が楽しめるようになる。トレイルは良く整備されていて歩きやすい。ただし、アメリカのトレイルらしく段差は高いので、身長の低い人は日本よりも少し苦労する。そして日本のように丁寧に巻いたり極端にジグザグに登ったりせずに、概して直登気味なので斜度が急な分、グングンと標高をかせげるアメリカ型のトレイル。そのせいか、最初はチラホラと咲いていた花が、標高があがると共にすぐに群生してきて、森林限界を超える頃にはお花畑と化して柄にもなく感動の声をあげてしまう。
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アラスカは緯度が高いので、標高500 m あたりであっさりと森林限界を越えてしまう。そして、完全に視界が開けると左手の眼下には氷河がのぞめ、右手の斜面にはお花畑が広がる。まさにハイキングには最適の季節。地元の人の話では7月中旬から8月中旬までは何かしらの花が色々な高度で代わる代わる咲くそうだ。そして、天気も徐々に回復をして、歩き始めた時は小さな窓だけだった青空が、みるみると広がっていく。
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3時間の予定で登り始めた目的地であったが、参加者の頑張りもあり2時間ほどで到着。イグジット氷河が眼下に広がる雄大な景色がそこにあった。この景色がまさに今回、見たかった景色である。トレイルはこの先も続くが、ハーディング氷原はまだまだ遠い。今回は予定通りここで昼食をとって折り返すことにして、持参のおにぎりとポットに入れた味噌汁でランチ。実に気持ちが良い。満足である。
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気がつくと目と鼻の先をマーモットがひょこひょこと歩いていく。なかなか愛嬌があるその姿は、写真を撮りたくなる被写体である。
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可愛い動物も見られてさらに満足….で、下山をしようとしたまさにその時、先程までマーモットがいた場所に目を向けると黒い大きな塊がたたずむ。ブラックベアーであった。一同、しばし呆然である。
距離はどの位だろうか。しいて言えば、走れば15秒くらいの距離と言えばわかりやすいだろうか。かなり近い。地元の人は熊除けのホーンに手をのばす。我々も熊を刺激しないように慌てずにゆっくりとした動きで体勢を整える。熊は我々に気づいているのかいないのか。食べ物でも探しているのかちょこちょこと動きながら、我々が登ってきたトレイルをおりていく。下からハイカーが登って来ないのを祈るのみである。
アラスカの国立公園はやはり少し怖い。この前日までカヤックツアーで過ごしていた場所では熊は常に充分な距離を保って活動をしていた。出合い頭さえ気をつけていれば良いのがセオリーだったが、人が多く訪れる国立公園では、人慣れした動物と人間との距離が必要以上に近くなることがある。例えばグリズリーの写真が撮りたければ、カトマイ国立公園かデナリ国立公園に行けば、時期さえ間違えなければグリズリーの写真を撮ることは難しくない。それがわかっていても、それでもやはり今回の距離にはやはりちょっと驚いた。ブラックベアーにしてこの存在感である。
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先程まで熊さんが歩いていた同じトレイルを帰路はリズム良く下り、1時間半ほどでワイルドナビ号のある駐車場まで到着。ここから約2時間のドライブでアンカレッジに戻る。蛇足ではあるが、この道は全米トップ20に数えられるシーニック・ロード(景勝道路)。この日は天気も良くアンカレッジまでのドライブも充分に堪能できた。そしてアンカレッジ到着直前、ドールシープが数頭、崖の上を悠然と歩いているのを発見。今回の旅の最後の最後までアラスカの自然の豊かさを感じると共に、人間と動物の距離にとまどうばかりであった。アラスカでの時間は1日1日が濃密。そして1週間の短くも濃密なアラスカの旅が終りました。ところで最後の乾杯は勿論、アンカレッジの地ビール工場併設の BAR での生ビール。アラスカの地ビールは近年、これまた侮れない味と雰囲気となってきたことをご報告しておきたい。
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キーナイフィヨルド国立公園
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