石坂博文さんのColumn
2016ヨーロッパ・アルプス ツアー日記
マッターホルン・ガイド登山 登頂記
7月29日〜30日
ワイルド・ナビゲーションのアルプス登頂ツアー
マッターホルン山頂アタック編です。
天気予報は、お客さんが来られる前からずっとチェックしていました。
登頂予定日の31日はどうも天気が思わしくない。天気がうまい方に転んでくれることを祈っていたのですが、どうもそうでもない。ザースフェーでのトレーニング前に1日スケジュールを前倒ししてアタックすることに決め、山小屋等の予約の調整の段取りをします。
そして、出来るだけお客様の体力を消耗しないように、岩稜とレーニングと高度順応をすることをパートナーガイドの Luca と Marco と打ち合わせ、トレーニングは無事に終了。そして、本番です。
ザースフェーの定宿のホテルでゆっくりを朝食を済ませ、ツェルマットに車を走らせ、いつもの駐車場に車を停め、タクシーでツェルマットへ向かいます。今回のように人数が揃えば、電車よりも早く割安で行けるので便利だ。
ツェルマットのホテルに荷物をデポして、いつものごとくシュバルツゼーに向かう。ロープウェーの駅からヘルンリ小屋へは約2時間、体力を消耗しないようにゆっくり時間をかけて、休憩を挟みながらのんびり向かう。
山頂を踏んだ知り合いの何人かのガイドからルート状態は良いとの情報を得て、よほどのことがない限り問題ないことを確信してほっとする。あとは明日の天気を祈るばかり。マッターホルンの天候は、思わぬ夕立による積雪でルートの難易度が上がってしまうこともあるからだ。
昨年、リニューアルされて新しくなったヘルンリ小屋。値段はかなり高くなりましたが、その分、快適で食事も美味しく、Wifiも普通に通じる。
夕方になるとガイド・アペリティブがあり、ガイド同士の懇親会と情報交換が行われる。このアペリティブは非常に重要で、これによって翌日のルートの譲り合いがスムーズに行われる。この日も半数近い地元のツェルマット・ガイド、それに加えフランス、イタリア、オーストリア、ドイツなどのガイドと挨拶を交わした。
アタック当日は3時15分に起床して、朝食は3時半。お客様に話かけて体調を確認し、緊張をほぐし朝食をとる。
マッターホルンのヘルンリ稜は、いきなり垂直なフィックス登りからスタートする。ここでの先頭争いに巻込まれると、日本人のお客様は体力的にも精神的にもダメージが大きいので、第一集団を見送ってからゆっくりスタートする。とは言っても、朝いきなりのフィックス登りはお客様には答えたようで、息が上がっているのが感じられた。
ペースを少し落とし、余裕がある箇所では息を整えるように指示。雪が残ってテクニカルな箇所も多少はあったものの、順調にソルベイ小屋をクリアし、最後の大詰めにかかる。
ソルベイ小屋の上の簡単なフェイス、そして快適なリッジをクリア。最後のフィックスの前の緩斜面帯のショルダーでアイゼンを履いて、最後の垂直なフィックスの混雑をなんとか無難に交わして、予定よりも30分ほど早く山頂に到達することができた。
マッターホルン登頂!
下山では、時折、会話も弾む余裕でソルベイ小屋に到着。この日はツェルマットではなく、シュバルツゼーに宿をとっているので、急ぐ必要もなく、ヘルンリ小屋でしばしの休憩後、ゆっくり景色を楽しみながら下山する。
ホテル・シュバルツゼーに到着して快適なシャワーの後、ビールで乾杯。おいしいスイス料理と共に、何故かイタリアのピエモンテのワインをいただきました。
昨シーズンは、悪天候でアタックできず、私にとっても、お客さんにとっても2年越しのマッターホルンを成功させることができ、ホッとした夜だった。
ちなみに、天気は下山の途中から崩れはじめて、ヘルンリ小屋に着いた頃には雨が降り出し、2日後の今も雨が降っています。アタックを1日前倒しした判断は成功でした。
(サッポロ・マウンテンタイム/石坂 博文)
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