Taman Negara
MALAYSIA


タマンネガラ国立公園 母子2人の旅


 PHOTO & TEXT by Tomoko / NISHIYAMA

  2008年9月にタマンネガラを訪れた Tomoko さんと
  5才のharuaki さんの旅のレポートです

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 はじめに

晩夏と初秋が重なる頃、母である私tomokoと5歳の息子haruakiは2人で成田空港を発ちました。
大小のスーツケースをそれぞれに運び、2人とも斜めがけのバックを下げて。

マレーシアという国を、以前から特に訪ねたいと思って訳ではありません。
でもその夏に届いた夏旅のリリースにあった「タマンネガラ・ジャングルウォーク」の文句に、私は何かしらの力で惹きつけてられてしまいました。
夜のジャングルを歩く?昼のジャングルをトレッキングする?川下り?ラタベルコ?

その頃の私は、たぶん都市型の生活にとても疲れていて、無意識のうちに(呼ばれるように)向かう先は、自然がぼうぼうと勢いを強くしている洋裁学校のギャラリーであったり、八ヶ岳であったり、緑の広いモエレ沼公園だったり、人の手が入ってはいるものの緑が豊かで美しい公園だったりしました。とにかく無意識のうちに、仕事から、あたりまえに暮らしていた生活パターン…電車に乗り、コンクリートの街を歩き、警備を通って仕事を始めるというような…に、どこかで辟易して、逃げようと思っていたのかもしれません。

ジャングルで何を見ようとしていたのか。その時の私には、全く想像できていませんでした。
だいたい全くもってアウトドア派ではなく、歩くのは好きだけれど積極的に山や川遊びをすることもなかった。海はべたべたするから入りたくないし(海は入るものではなくて見るもの、またはおいしい食べものがいるところという概念)、頭では、都市型のなんでも揃う、ストレスがない(はずの)生活で、何不自由ないと思っていたはずなのです。
行けるかどうかしばらく悩んで、なんとか行けそうだと思い、夫は途中で脱落し、それでも行こうと思った。それはきっと、マレーシアが呼んでいたのからだと思うのです。




タマンネガラへと向かう船着場近くの
食堂。ジャングル旅への始まり。



この日の昼ごはん。Fried rice & chiken AJINOMOTO(おそらく)ばりばり。


出発。船着場からくるっと旋回して、
行きは川を遡ること3時間。




こういう船に乗って川を進んでいく。 私たちが乗っている船は到着直前にエンジンが止まって、5分位どんぶらこと川を流された。


ガイドさんの話によると、乾季には川の水が少なくなって、船を押すはめになることもあるらしい。私たちがでかけた時は大丈夫でした。


到着した「ムティアラ・タマンネガラ・リゾート」内。茶色の建物(シャレー)が100棟くらいあって、そのひとつに滞在。



5歳児は途中からすっかり旅人になっていました。


  



 旅ははじまる

母子2人で一週間近く旅をすることに不安がなかったか?

というと、実のところほとんど不安はありませんでした。私は英語がすばらしくできるという訳でもなく、マレー語を知っている訳でもなかったですが、どうしても行くのだ!と決めてからは、きっとなんとかなるだろうと思っていました。
行きたい気持ちを強く持ち、何があってもなんとかしようと、これまた無意識に思っていたのですね。

飛行機に搭乗した時点で「やっぱり無謀だったかも」と一瞬後悔しかけましたが、結果は杞憂、むしろ(私たちにとっては)日本よりも過ごしやすかったかもしれません…マレーシアは多民族国家で、法律が厳しく、治安は非常に良かった。
人は優しく、言語は英語・マレー語・中国語などが、人種も同じくいろいろと錯綜していて、「何人でも、何語をしゃべっていても、バイリンガルでも、へなちょこ英語でも、なんでもいい」というところが、私には非常に合っていました。

タマンネガラへは、首都クアラルンプールからバスで3時間、さらに船で川を遡ること3時間。
道中日本人は全然おらず、欧米の方たちがほとんど。
何度も使ったせいか傷だらけのスーツケース(しかもプラスチック製の、そんなに強くもなさそうな)や、バックパッカー、贅沢なリゾート旅とは程遠い。
でもわくわくした。
泥水の混じる川に浮かぶ船(ちなみにクアラルンプール=「泥が合流する場所」の意)、
途中で止まるエンジン、どんぶらこと流される私たち。リカバーしてくれたスタッフ、両岸の深い緑。
なんとかたどり着いた、ムティアラ・タマンネガラ・リゾート。


正直に言えば、日本の設備の整ったマンションで暮らすほうが、よっぽどものは豊かだし、快適です。
滞在したシャレーにはシャワーしかないし、その他設備も豪華とは言えません。
初日に滞在したクアラルンプールのホテルと比べたらもう雲泥の差。

でも約3日間のタマンネガラでの滞在で、その「質素だなあ」という意識は「これくらいで十分じゃないか」という意識へと変わっていきました。

ここには普段の暮らしと比べて快適な設備はない。
でも豊かな森があり、たくさんの生き物が生きている。
日中は日本の盛夏ほどに暑くなり、しかし日が暮れるとすっかり涼しくなる。
車もない。歩くか、船に乗せてもらうか。

トレッキングで汗をかき、汗臭くなり、その後食べたアイスカチャン(マレーシアのかき氷)のひどく美味しかったこと、そして帰ってぐうぐうに眠ってしまったこと。

目覚めたら雨で、そのうちひどい雷雨になり、でかけらずにシャレーにこもっていたこと。
でもこもりっぱなしでは晩ごはんが食べられないので(ルームサービスどころか電話もなかった)、頃合を見計らい、カッパと傘、そして足元をまくってサンダルで、レストランまででかけたこと…。


そこではあらゆるあたりまえのことが、あたりまえにありました。

雨が降ったら傘を差す。傘でも避けられなければ濡れる。
アクティビティで「ラフティングのラフ(ボート)が壊れてるから、ラフティングはできないよ」と言われたら笑ってあきらめるしかないし、「定員に足りないから倍額になるよ、どうする?」と言われれて、決断するのは自分。

できないものはできない。危険なものは危険。川は船がなければ渡れない、船がないなら、お金を払って渡らせてもらう…。


私が行きたくて行った母子2人旅でしたが、子どもにとっても非常によかったようです。
深い森をゆくトレッキング、最高地上30Mだというキャノピー(吊り橋)、幅20センチしかなく揺れるキャノピーに、haruakiは最初怖いと言い、そのうち慣れてしまい、最後には「もう1回!」とまで言っていました。

森にいる鳥、サソリやナナフシ、大きな蟻、鹿、を間近に、遠くに見たり。鳥の声、蝉の声、水の音、川を行きかうボートの音、早朝木々を駆け巡る猿のざわめく音。TVも電話もインターネットも、便利なものはなく、それより豊かで非常に面白く、楽しい自然がある!

ツアーに同行した人たちと顔見知りになり、翌朝「Hello!」と挨拶を交わす。子ども同士は勝手に仲良くなっていく。母同士は都市型生活の息苦しさについて話をする。私は出会って気になった人たちの写真をたくさん撮り、音も録っていました。



リゾートの中にではサルも出ます。猪もいるらしい。


マレーシアの猫。きりり。しかし警戒。




アクティビティについての案内。
ラフティングのラフ(船)は壊れていてできず、ラピッドシューティングは人数が足りなくて参加できなかった。
水のアクティビティ運には恵まれず…。



リゾート併設のレストランをよく利用。これは朝食バイキング。
ビーフンゴレン(ビーフンの炒めたの)、ナシゴレン(炒めごはん)、大豆の煮たものに、マフィン…



haruakiとtomokoのイチオシおすすめ!は、アイスカチャン。豆の入ったかき氷。かき氷に、とうもろこし・砕いたピーナッツ・キドニービーンなどの豆、赤と緑のキッチュなゼリー、黒糖のような味の密、ココナッツミルクもかかっていたっけな… 南国の暑さに、この甘さと冷たさが胃袋に沁みました。2回も食べた。「アイスカチャン食べよう」「アイスカチャン〜」「アイスカチャン!」(連発)



アクティビティのひとつ、洞窟探検。案内によると「短パン・運動靴で」とあったのに、ガイドさんは普通にサンダルを履いて現れた。


こうもり。掴めそうなくらい近いのに、超音波センサーのお陰で彼らを捕まえることはできない。大人では結構狭い、そして子供には結構スリリングな狭い洞窟を、這いつくばったり、足をすべらせて水に落ちたり(haruaki…)しながら進んだ。


洞窟近くでは、現地の人の住居が。
葉っぱの家、火をおこしての煮炊き、木にロープを張っての洗濯物干し。
タマンネガラリゾートは日本に比べたらずっと質素だけれど、ここで見たのはもっと質素な生活でした。これがリアルな、ここの人たちの生活かもしれない=リゾートはそれでもまだ、贅沢な環境なのでしょう。




どこでもみかけたマイロ=ミロ。 空港のマクドナルドでも、ドリンクメニューの中にマイロがありました。


ナイトジャングルウォークで見たナナフシ(虫)。ガイドさんは日本語が少しできる人で、「チョットマッテ」「マダ」「アブナイ」とharuakiに警告してくれたり、ナナフシも「ナナフシ」と、それから「コオロギ、サソリ、トリ、シカ」などなど解説をしてくれた。おかげでharuakiもより楽しむことができました。ガイドさんありがとう。


デイトレッキング。haruakiはもうおっさん化して、首にタオルを巻いている(暑い)。ナイトウォークと途中まで道は同じ、日中はさらに進んでキャノピーウォークや、山道を登っていく3時間コース。夜見たone night flower が本当に翌日には地面に落ちてしまっていたり、トーチを当てると光っていた昨日のキノコはこれだよと、夜と違う姿を見るのは面白かった。ここでもデイトレッキングを強くすすめてくれた、ガイドのアブラに感謝。



木の蜜(?)に火をつけると天然のトーチになったり、


葉っぱを裏から火であぶると、


「パンパン!」と音がして、天然の爆竹になったり(おそらく焚き火が何かをし ているときに、偶然発見されたのだろうと、ガイドさんは言っていました)。



キャノピー(吊り橋)ウォーク。


最初は怖いと言っていたのに、最後には「もう一回やりたい!」と。


キャノピーから見えた景色。



シャレーの中で。


星の形のシリアル。


もうすぐ出発の時間。



フロントのこの方は私の名前をすぐに覚えてくれて、私が「どうして名前を知ってるの?」と聞くと、笑っていました。
とても親切でお世話になりました。
ありがとう。



さよなら、ムティアラ・リゾート。


帰り道はちょっと悲しかったのだと思う…雨が降って、バッグに用意してあったカッパを2人して着込んだ。
でも両岸の広がるジャングルの木々を見ていたら、みんな(生い茂る木々や自然)かそれか何かが「そのままでいいんだよー、ありのままでいいんだよ」と言っているような気がした。少し涙。




バスのガイド・アップルさん。
haruakiは「アップルせんせい」と呼んでいました。「アップルせんせい今なにしてるかな?」「アップルせんせい、今ごはん食べてるよ」



空港へ向かう車の中で。



 旅のおわり

旅の帰り、船で川を下っているとき。

両側には森、高い木がにょっきり伸びているところあり、ツタのようなものが生い茂っているところあり。
いろいろな植物がいて、それぞれに主張して、ありのままでいる…。
マレーシアで私は「そのままでいいよー、ありのままでいいんだよ」と言われたような気がしました。
そしてそれこそ私が探していたもので、呼ばれた理由だと。

めためたな英語(通じていたのかどうか?)、片言のマレー語(これはどうやら通じていたらしい)、深い森、一晩しか咲かないワンナイトフラワー。夜にトーチを当てると光るマッシュルーム。青い葉。

haruakiは今でも言います、
「またマレーシアに行きたいねー」
私もそう思う。

6時間あればクアラルンプールでショッピングができる。
大きなショッピングモールもブランドのお店もたくさんあるし、電車も走っている。
でも6時間かけてもまたタマンネガラに行きたい。

マレーシアから一度も出たことはないというのに、夜道で「モウカリマッカ、ボチボチデンナ」と…。
そんなとこで大阪弁を聞くとは思わなかった!日本語を少し話せるガイド・アブラにharuakiはたくさん助けられた…

ジャングルに行きたいと思う。たくさんの人に会って話をした、豊かな場所に。





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